■マコの傷跡■

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chapter 49



~ chapter 49 “荒れる” ~

自分で進んで行けそうだ、頑張ろう、と思いはしても
気持ちから不安が完全に消える訳じゃなかった。
進んで行こう、頑張ろう!と思う気持ちの強さと同じだけ、不安になるとガクンと落ちた。
前向きと後ろ向きの、気持ちの降り幅が広くなったのだ。

不安になるとそれが止められず、でも何がそんなに不安なのかもよくわからずに居た。
心の中が不安でいっぱいになるとまた狂った様に泣いた。
昔と違うのはそれを旦那の前でもした事。そんな自分を人に見せたのは彼が初めてだ。
彼を叩きながら泣きわめいて私は暴れた。
自分でも沸きあがる感情をどうしていいのかわからなかった。
自分の中で自分の意志に反している別の自分が暴れたがっている。
そいつを力づくで押し付けて欲しかった。
彼が困っているのは分っている。それでもどうしても止められない。

私は1人で空いた時間を埋められなかった。1人で居て何かを楽しんだりした事がなかった。
1人で居るのがどうしても嫌で、彼にかまってもらいたくて、
いくらかまってもらっていても足りなくて「もっともっともっと」といつも思っていた。
カラカラに乾いた土の様に、いくら彼からの愛情を受けても潤わない。
彼が仕事で疲れていても、他にやる事があっても、私の相手をしてくれないと別の自分が暴れ出す。
完全に彼に依存していたんだと思う。足りない、足りない!もっと水をちょうだい!と。
彼は彼なりの精一杯で相手をしてくれていたと思うし、いつも寝不足で可愛そうだった。
寝かせてあげなければ、と頭でわかっているのに、違う自分がもっと!と心の中で叫んでる。

頑張ろう、と思えば思うほど、自分でもよくわからないどろどろした感情が溢れ出て、
それを打ち消すのに必死だった。
“違う、頑張ろうと思ってるのに!どうしてこんな気持ちになるの。
消えろ!こんな感情は消えろ!!こんな私は要らない!”
自分の中にぐつぐつと何かが煮えている様な感覚を消したくて、
自分の腕に爪を思いっきり立てたり、ガンガンと机に打ちつけたりした。
暴れたがる自分をそうやって打ち消したかった。叩きのめしてしまいたかった。
旦那はみみずばれとアザだらけになった私の腕を見て、悲しそうに「こんな事はやめてくれ」と言った。
どうして欲しいの?どうしたら落ち着くの?どうしたら不安じゃなくなるの?
全部、答えはわからなかった。どれだけかまってもらえば満足するのか自分でもわからなかった。
「このままじゃ、俺がまいっちゃうよ・・・。」
その通りだと思った。私がこんなでは彼がつぶれてしまう。
このままではだめだ。このままでは全てだめになる。
「わかってるの、このままじゃだめだってわかってるの。
だから頑張ろうと思ってるの、でもどうしていいのかわからないの。
待って。もう少し待って。ちゃんとするから・・・もっと、ちゃんとするから。」

もっと1人で時間を使える人にならなきゃだめだ・・・。なにか1人でも楽しめるものを見つけよう。
細かい作業は元々好きな方だから、通販で毎月送られてくる手芸のキットを買って作ったりしてみた。
毎日、小さなパーツを作って「今日はここまで出来たよ」と旦那に見せると、
いつもみたいに大げさな表現で誉めてくれた。
1人で居る時間に黙々とやった作業を、帰った旦那に見てもらうと少し満足できた。
他にはお茶に興味を持った。色んな種類の紅茶を集めて帰った旦那と一緒に飲む。
お茶に詳しくなって、説明を旦那に感心しながら聞いてもらうと嬉しかった。
PCにどっぷり漬かったのもこの辺りからじゃないかと思う。
そうやって興味の対象をいくつか持つ事で気を紛らわし、暴れる回数を少しづつ減らしていった。




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